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「多気町に本場のマルシェをつくりたい」
手島竜司が描く、産直市場〈マルシェ ヴィソン〉の青写真

「多気町に本場のマルシェをつくりたい」
手島竜司が描く、産直市場〈マルシェ ヴィソン〉の青写真

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VISONの中核をなす施設のひとつ〈マルシェ ヴィソン〉。多気町だけでなく三重県を中心とした紀伊半島の海産物や農産物を購入できる“産直”市場だ。

ここでは、多彩な出店者が軒を連ね、訪れる人びとを魅了する。多気町のとなり松阪の名産・松牛を扱う精肉店〈若竹〉、海女の町・鳥羽市相差の〈海女小屋 なか川〉といったテナントのほか、和歌山県那智勝浦で水揚げされるマグロ、伊勢志摩より直送される伊勢海老や鮑などの食材が並ぶ。いかにこのエリアが豊かな食材に恵まれているかがよくわかる。

ほかにも、マルシェ ヴィソンでは地域の生産者が気軽に出店できる〈軽トラマルシェ〉もある。その日に採れた野菜を軽トラックの荷台に乗せて販売する、“産地直送”を体現するコーナーだ。 

あらゆる食の恵みが集結するマルシェ ヴィソンの監修を手がけるのが、手島竜司氏だ。氏の活躍は、ミシュランガイドパリ一つ星として掲載された自身の店舗〈パージュ〉で知られているが、VISONとの出会い、そしてマルシェ ヴィソンの監修とはどういう取り組みなのか伺っていきたい。 


マルシェ ヴィソンに感じた可能性

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「アル・ケッチァーノのオーナーシェフ・奥田政行さんとパージュでイベントをしたのがきっかけでした。もう4年ほど前のことなのですが、お酒の席でこのVISONのことを知ったんです。当時はまだ漠然とした話だったのですが、地産地消、地域活性化というキーワードはすでにあって、興味を持ちました。

その後、多気町に呼んでいただいて、VISONの発起人であるアクアイグニスの立花社長とお会いして、プロジェクトのことを伺いました。私はずっとフランスにいたので現地のマルシェの状況をお伝えしたのですが、産直市場としてマルシェ ヴィソンを、ぜひ一緒にやりましょうと」。

当時、手島氏にとって、多気町は松阪牛や伊勢海老、鮑といったメジャー級の目立つものはあっても、他の食材はピンとくるものがなかったという。しかし、オープンに先駆けて現地を視察してまわり、さまざまな生産者と会い、三重ならではの食材や文化に触れていくと、ぼんやりとした思いは確信に変わっていった。

「人もいいし、食材もいい。日本のなかでも本当にいいもの、おいしいものが集まっている場所なんだなと実感しました。この土地の食材の魅力をマルシェに落とし込んでいくことに意味がある。そして、フランスで親しんできたマルシェの温度感を入れ込んでいきたい。ちゃんとしたものを、いいものを手に取ってほしいと感じました」。    


産直市場の枠を超えて、プロが訪れるマルシェにしたい

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「いい食材がマルシェ ヴィソンに集まれば、レストランのシェフをはじめ、食のプロが買い付けに来ます。今は豊洲市場一択ですが、マルシェ ヴィソンは、多気町だけでなく三重県を中心に関西圏、関東圏からも直接買い付けにくるマルシェにしたいんです」。

手島氏に話を伺うまで、マルシェ ヴィソンは地域の山の幸、海の幸を旅行者に販売する店舗の集合体のようなものだと認識していた。しかし、マルシェ・ヴィソンの存在意義はそれ以上のもの、まさに「マルシェ」そのものにあった。

 生産者と買い手をつなぐ場所。そんな食の「ハブ」としてマルシェ ヴィソンを機能させることこそ、手島氏が考える産直市場の姿なのだ。 

 「産直市場という言葉には“産地直送”という意味があります。私のイメージですが、それは旅で来た人が買う場所というような印象。地域の食材を集めて販売することは間違いではないのですが、将来的には三重以外の食材が集まる場所になってもいいのでは、と考えています。豊洲市場やかつての築地市場のように、プロが仕入れに行く市場のような場所にしたいんです」。

「それに、毎週末にパリ各地で開催される市場というのもあります。あちこちに朝からテントが出て、農家さんが野菜や果物を売り、魚も肉も並ぶ。オーガニック専門のマルシェもあります。とにかく楽しいんです」。

手島氏にとって、マルシェとは楽しく食に触れられる場所。食材をしっかり見極め、手にとって選ぶことができ、買い物を楽しめる。「目利きをする感覚」と手島氏は笑うが、それこそがマルシェの醍醐味なのだ。

マルシェ ヴィソンでは、お客さんにいいものを選んでほしい。残ったものは私たちが料理にするなど、方法は考えます。いいものを選ぶ。それは買う側として正しい判断ですし、農家さんもいいものを作ろうと努力してくれる。相乗効果が生まれるんです。最初からできるかわかりませんが、ブレずにやっていきたいことのひとつですね」。 


監修という立場だからできること

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マルシェ ヴィソンを象徴するコーナーとして設けられた〈軽トラマルシェ〉。農家さんがその日に採れた野菜を軽トラックの荷台に積んで、そのまま売りにくる産直市場をストレートに体現した販売スタイルだ。本来、野菜の生産量は一定ではない。たくさん採れるときもあれば、採れないときもあるだろう。本当においしいベストな状態で出せるものを出す。それが軽トラマルシェだ。 

「まずは野菜の販売からスタートしますが、お魚屋さんのエリアのテナントの裏のスペースを使って、海産物の軽トラマルシェもやっていきたいと考えています。豊かで新鮮な三重の海産物を豊洲市場を通さずに、すぐに手に入れられるようにしたいんです。販売する数は決めず、その日に獲れたもの。そこがポイントです。販売量は安定しませんが、よりよい食材を求めるレストランにとってはこれ以上ない選択肢になるはずです」。

レストランがいい食材を手に入れられるということは、食文化のレベルが上がるということでもある。手島氏自身、食材の仕入れには常に奔走してきた。それはたんに買うという行為だけではなく、生産者との関わりのためでもある。いい食材を手に入れるためには生産者を知ることが第一歩だからだ。軽トラマルシェでは、生産者と直にコミュニケーションを取ることができる。そういう会話のなかから、手島氏は新しい可能性が広がっていくことを期待しているという。

一方、手島氏にとって、自身のレストランを離れての「監修」というプロジェクトははじめてのことだという。これまではいち料理人としてひとつのレストランでやっていくということに全霊を注ぎ込んでいた。「でも、まだ料理人としてできることがある、料理人という職業はもっと発展していくべきだ」。そんな思いが手島氏を動かした。

「料理人という職業の可能性を広げたいんです。自分のレストランを含め、食にまつわる活動は仕事というよりも、人生。一緒にやらせていただいているお店は、人生かけてやってきている方ばかり。それぞれの思い、挑戦したいことを尊重して、一緒に作り上げている感じですね。出店者の方々の本業はやはり生産者なので、かならずしもお店の経験があるわけではない。そこで私の経験をもとにメニューの開発や、提供の仕方、調理のプロセスなどのサポートをしています」。


手島竜司が描く、マルシェ ヴィソンの青写真

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「多気町をはじめ、三重県には本当にいい食材があり、それぞれの生産者がいます。その生産者、買い手になるお客さんが、幸せになれるような場所にしたいんです」

手島氏が描くマルシェ ヴィソンの姿は、産直市場という施設としてのハードの面だけでは完成しない。生産者と買い手を繋ぎ、いいものを正しい価格で流通させるという本質的な市場の姿の構築こそが、このプロジェクトの軸にあるのだ。

「それを解決してくれるのがマルシェという市場本来の機能であり、マルシェ ヴィソンなんです。マルシェはこういうものだ、お肉屋さんはこういうものだという理想を追求したい。それは健康的という言葉でも表現できると思います。

健康というのは、新鮮であり、安全であるという意味と、経済的な健康という意味。今は生産者が不健康になってしまっています。いい食材があるのに、適正な価格で卸せていない。そういった経済的な面も含めてブレないようにマルシェ ヴィソンという大きなプロジェクトに取り組んでいきたいと思っています」。

地元の食材が集まり、生産者たちがその魅力を最大限に引き出した料理を供するマルシェ ヴィソン。ここは、これまでの産直市場の概念をアップデートする実験の場でもあるが、その魅力は買い手が素晴らしい食材を最適なプロセスで手に取れることにある。加えて、手島氏がフランスで感じた本来の市場としてのマルシェの楽しさ。マルシェ ヴィソンにちりばめられた本場のエッセンスは、訪れる人たちを新しい食の世界へといざなうのだ。 

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プロフィール

  • 手島竜司(てしまりゅうじ)

    熊本県出身 19歳から地元である熊本のフランス料理店で修行を始める。料理人として働きながらワインにも興味を持ち、23才でソムリエの資格を取得。 26歳で渡仏。地方の星付きレストランから始め、パリで当時三ツ星のRESTAURANT LUCAS CARTONで修行を重ねる。その他、様々なレストランでシェフとしての経験を積む。 食材に興味を持ち、BOUCHERIE HUGO DESNOYERでは精肉を、魚や野菜などのフランス食材についてはTERROIR D'AVENIRで学び、同時にフランスの生産者訪問を重ねる。 フランス以外に興味を持ち、様々な国でスタージュをしながら独立準備を始める。 2014年、37歳でパリ16区の凱旋門近くに RESTAURANT PAGES をオープン。翌年2015年、ゴーミヨにてGRAND CHEF DE DEMAIN(未来の巨匠)を受賞。同年PAGESの隣にBAR A VIN 「116」をオープン。 2016年、オープンから1年半という早さで「RESTAURANT PAGES」が、フランスのミシュランガイドにて1つ星を獲得。 同年、熊本市長から熊本親善大使に任命される。 2017年3月、最高峰のクリエイト料理賞受賞。


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