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みりんづくりで自然を守る。米の甘みと旨みを極限まで引き出した、VISON生まれの本みりん

みりんづくりで自然を守る。米の甘みと旨みを極限まで引き出した、VISON生まれの本みりん

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みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISEみりんとは、もち米とこうじ、焼酎を発酵させてつくる調味料のこと。アルコール度数が14%前後あり、江戸時代以前は高級酒として飲まれていた歴史を持つ。


和ヴィソンに店を構えるみりん専門店「美醂 VIRIN de ISE」を手掛けるのは、明治43年(1910年)創業の「角谷文治郎商店」。美醂 VIRIN de ISEには醸造所が併設されており、みりんがつくられる様子をガラス越しに見学することができる。


「うちのみりんはね、米一升、みりん一升。添加物を一切加えていないから、使った米の量がそのままみりんになるんです」。そう教えてくれたのは、角谷文治郎商店の角谷利夫代表だ。

みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
角谷文治郎商店代表の角谷利夫さん。


材料は、材料はもち米、米こうじ、米焼酎のみ。伝統的製法の本みりんは「米一升、みりん一升」

美醂 VIRIN de ISEについて紹介する前に、まず「みりん」の種類についておさらいしておきたい。角谷文治郎商店がつくるみりんは、一般的に「本みりん」と呼ばれるもの。分類は「酒」となるため、ビールやウイスキーなどと同様に、販売価格には酒税が含まれる。似た調味料に「みりん風調味料」「発酵調味料」などがあり、あまり料理をしない人にはその見分けが難しいかもしれない。


本みりん みりん風調味料 発酵調味料
みりんタイプ 料理酒タイプ
原材料 もち米、米こうじ、焼酎もしくは醸造アルコール、糖類など酒税法で定められた原料 糖類、米、米こうじ、酸味料、調味料など 糖類、米、米こうじ、アルコール、食塩など 米、米こうじ、糖類、アルコール、食塩など
製法 醸造・熟成 ブレンドなど 発酵、加塩、ブレンドなど
アルコール分 約14% 1%未満 約10% 約14%
塩分 0% 0~0.2%未満 約1.5% 約2%
売場 酒コーナー 調味料コーナー 調味料コーナー 調味料コーナー
価格


そして実は「本みりん」にも2種類あり、現在は、醸造アルコールや糖類を加えてつくる「工業的製法」でつくられたものがほとんどだ。そうしたなか、角谷文治郎商店が手掛けるみりんの原材料は「もち米、米こうじ、焼酎」のみで、約1年をかけて熟成させる「伝統製法」でつくられている。


本みりん(伝統的製法) 本みりん(大量生産可能な製法)
蒸したもち米と米こうじに焼酎を加え、1年をかけて醸造・熟成をおこなう。使ったもち米とほぼ同量のみりんができる。 蒸したもち米と米こうじに、醸造アルコールと糖類を加えて熟成。伝統製法よりも期間が短く、もち米に対して約5倍の量のみりんができる。現代において一般的な製法。


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
(左)「美醂 VIRIN de ISE」でつくられている本みりん「美醂」のサイズは3種類。(右)「三州三河みりん」に国産青梅を漬け込んだ「三州梅酒」は、砂糖不使用


醸造アルコールや糖類を加えてつくる工業的製法は戦後の米不足のなかで生み出された経緯があり、みりんだけでなく、日本酒でも広く採用されている。角谷文治郎商店においても、物資不足を受けて工業的製法を取り入れた時代があったというが、現在つくっているのは伝統的製法の本みりんのみ。看板商品「三州三河みりん」を醸造する愛知県碧南市の蔵では、国内だけでなく海外にも本みりんが出荷されている。


伝統的製法にこだわり続ける理由について角谷代表にたずねると「伝統的製法でみりんをつくり続けることは、日本の自然環境を守ることにつながるんです」との答えが返ってきた。

畑や田んぼは身近な「自然」。国内の農産物を消費することは、日本の自然の保全につながる

「戦後の日本においては工業化が急速に進み、あらゆる分野において、質の高いモノづくりとコスト削減が進められました。

食品も同様に、代替材料や添加物を利用することで低価格・大量生産を実現してきましたが、1980年代ごろからだんだんと、安全への意識が高まってきた。そうした背景を受けて、弊社のみりんを手に取ってくれる人が一人、また一人と増えていきました」


当時は本みりんとみりん風調味料を区別するルールはなく、価格の安さから、みりん風調味料を選ぶ人が多かったという。そうしたなか、経済成長に伴って原材料や安全性にこだわる人が増え、角谷文治郎商店の本みりんが注目を集めるように。それまでは料亭などプロ向けの販売がほとんどだったが、健康志向の高まりから、家庭向け商品の売上が徐々に伸びていった。


次に角谷代表が着手したのは、みりんづくりに使用する原材料の見直し。安心・安全にこだわる人たちからの期待に応えるべく、材料の米もオーガニックなものにしたいと考えた。


「いい生産者がいると聞けば全国に足を運び、田んぼと米を見せてもらいました。平成6年から減農薬・減化学肥料の特別栽培米への転換を図り、すべてのもち米が特別栽培米になっています」

みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
蔵で発行している「美醂便り」。みりんを使った季節の料理や、みりんの活用方法などを発信している


国産米から焼酎をつくり、国産もち米と米こうじを加えてみりんを仕込む。そうして、仕込んだお米と同じ量のみりんが完成する。

「『自然環境』と聞いて山や海を思い浮かべる人は多いと思いますが、畑や田んぼは、実は身近にある『自然』なんです。でもそれは、人の手が必要な『自然』。手入れが途絶えてしまえば、その土地はすぐに荒れてしまいます。

お茶碗1杯のごはんは、稲の状態だと、腕いっぱいに抱えるほどの量になる。私は、毎日ご飯を食べることも、日本国内でつくられた農産物を購入することも、身近な自然環境を守ることにつながっていると思っています。

持続性の高い生産農家から米を仕入れること。米一升、みりん一升の伝統的な製法でみりんをつくり続けること。そうした商売を継続することが、日本の自然環境を守ることにつながると信じています」

みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE


多気町でつくられた米を使い、VISONでしかつくれない本みりんを醸造する

国産米へのこだわり。美醂 VIRIN de ISEではそこからさらに一歩踏み込んで、VISONが位置する多気町周辺で生産された米でみりんをつくっている。


地元産の米で焼酎をつくり、地元産のもち米と、米こうじを混ぜあわせる。すると、日を追うごとにもち米のでんぷんがこうじによって糖分に分解され、甘い汁に変化。これがみりんの素となる。


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
蒸したもち米とこうじ、焼酎を混ぜ合わせた直後の様子。米が焼酎を吸い込むため、見た目は普通のご飯と変わらない。


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
1ヶ月ほど経った様子。米の形が崩れ、液状化しているのがわかる。店舗側の踏み台から、ガラス越しに見学可能
3ヶ月ほど熟成させたら、 搾り機にかけて「みりん」と「みりん粕」に分ける。みりんは、タンクに戻してさらに1年ほど熟成。みりん粕は、粕漬の材料などとして使われることが一般的


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
「限られたスペースのなかで、焼酎蔵とみりん蔵の両方を設置するのは至難の業でした」と、角谷代表。工程ごとにタンクや機械の位置を移動しながら、無駄のない動きで仕込みをおこなっていく

美醂のまろやかな甘さとコクは、料理はもちろんのことスイーツとの相性も抜群。VISON内には美醂とのコラボレーション商品が多数あり、どれも人気を集めている。


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
三河みりんを練り込んだ、Mariage de Farineの「ミルクティーラウンド食パン(左)」と、本草研究所RINNEのグラノーラ(右)


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
MIKURA Vinegaryの酢をもとに、伊勢醤油の醤油と美醂を加えたVISONオリジナルポン酢


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
第十八甚昇丸と開発した「ガス海老の塩辛」


みりんづくりで自然を守る。美醂 VIRIN de ISE
「コンフィチュール アッシュ」内にあるLE CHOCOLAT DE Hが手掛けた、美醂のショコラ「みりん×キャラメル」。


本みりんには、「煮崩れを防ぐ」「魚の臭みを消す」「照りを出す」といった効果がある。しっかりと熟成された美醂には糖分やアミノ酸、香り成分がふんだんに含まれており、いつもの料理をワンランクアップさせてくれるはずだ。


また、美醂を煮詰めてアルコールを飛ばせば、甘みとコクが増してまるでカラメルソースのように。プリンやアイスにかけるだけで、極上のスイーツに変身する。美醂 VIRIN de ISEの店頭ではどちらも試飲することができるので、異なる味わいをぜひ体感しよう。


角谷代表は言う。


「ご飯を噛むと甘くなることは、日本人ならみんな知っているはず。でもそれは、米が持っている甘みのほんの一部分でしかないんです。みりんの甘みは米の甘み。美醂 VIRIN de ISEをきっかけに、米本来の甘みと旨みが詰まった本みりんを、もっと多くの人に知ってもらえたらうれしいですね」

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