VISON Beautiful Village in TAKIVISON Beautiful Village in TAKI

植物や自然の力で体を整える。
VISONの根底に流れる「本草」の考えとは。

植物や自然の力で体を整える。
VISONの根底に流れる「本草」の考えとは。

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三重に古くからゆかりのある「本草」。私たちの祖先は、植物や鉱物の力を使って心身を癒し、健康を保つための手段として活用してきました。これを現代に暮らす人々に寄り添うよう再考し、新しい健康の形を提案しよう。

VISONでは、三重大学とロート製薬の共同研究により、現代の本草を発信していきます。 そこで、研究の中心となった三重大学地域イノベーション学研究科教授・西村訓弘さんとロート製薬上級執行役員・瀬木英俊さん、文筆家・千種清美さんの3名に、本草とはどういった考えなのか、現代に取り入れることでどんな形を目指したのか、具体的な取り組み、VISONで体感できる本草の魅力ついてお話を伺います。 


はじまりは

―本草とは、もともとどのような学問ですか?

西村訓弘さん(以下、西村) 本草はもともと中国の伝統的な学問で、自然の力や植物の力を体に取り込んで、体を整えるという考えです。それが日本に伝わり、江戸時代に多気出身の本草学者・野呂元丈も伊勢にある植物などを研究しながら、発展に寄与したと言われています。漢方でいう生薬などの植物は、体が本来持っている力を引き出して、整える力があると言われていますが、その真髄のようなものが本草です。


―その本草を再考することについて、どんな想いがあったのでしょうか?

西村 「多気」という場所は、昔から気が集まる場所と言われているのですが、大学のある津から多気を通ってお伊勢さんへ行って帰ってくる。その度にこの場所は「気」というか気配が変わる特別な場所だと感じていました。
そこでVISONのある多気にゆかりある本草を、もう一度現代の暮らしに寄り添って考えなおしてみてはどうかと考えました。この場所を本草復刻の地として、本草に基づいた「本草湯」で体を整えて癒す。そんな場所をつくり、ここから世界に本草を発信したい。そんな想いがありました。

瀬木英俊さん(以下、瀬木) このプロジェクトが始まったのは、2014年。産学官連携の事業として地方創生を目的にスタートしました。西村教授がおっしゃるように、多気は気が集まる場所であり、三重県の中心でもあります。ロート製薬は、“健康経営”を目指していますが、同時に“薬に頼らない製薬会社”を目指しているんです。究極の健康とは、自分自身で体の不調を察知して、何が必要なのか感じることができ、自分で体を整えられること。しかし今は、不調や欲するものを感じとることができない人が多いと言われています。つまりそれは五感が磨かれていない状態。ここへ訪れることで五感が磨かれて、体が何を欲しているか感じることができる、そんな場所があったら素晴らしい。本草の考え方が、将来の新しい健康学に繋がるのではないか。この地で江戸時代から受け継がれている本草を広めることで、地域の貢献にもなるのではないかと考えました。

西村 それを具現化したのが「本草七十二候」というものです。もともと日本では薬草を「七十二候*」という考えをもとに、食したり触れたりする風習があったので、その多気版として捉え直しました。千種先生に名称をつけていただき、薬草を組み合わせて、温浴で体感していただけるようにしています。
*古代中国で考案された季節を表す方式のひとつ


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三重大学地域イノベーション学研究科教授・西村訓弘さん

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ロート製薬上級執行役員・瀬木英俊さん

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文筆家・千種清美さん


気候や行事、旬の食材を心身で感じる 「本草七十二侯」の薬草湯

―VISONの温浴施設〈本草湯〉では、「本草七十二侯」に基づいて調合した本草湯が、月替わりや5日ごとに楽しめます。「本草七十二侯」とはどういったものでしょうか?

千種清美さん(以下、千種) 半月毎の季節の変化を示す「二十四節気*」を、さらに5日ごとに分けたものが「七十二侯」といい、もともと中国にあったものです。中国と日本は季節や風土も違うので、日本に合うようにこれまで何度も改訂されてきていました。それを今回多気版に調整した上で「本草七十二侯」と名付けました。この土地の気候や行事、食べ物などがここに表されています。私は近くに住んでいるので、日頃自分が季節や行事を通して感じることを言葉にするのはとても楽しい試みでした。伊勢神宮の主要な5つのお祭り「五大祭」に合わせて、伊勢神宮の社殿に使われているヒノキを連想させるよう、ヒノキの玉をお祝いでお湯に浮かべるなど、素材の組み合わせも提案させていただきました。
*立春、春分、夏至など季節を表す言葉。1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けている。


―本草湯には、具体的にどのような素材が使われる予定ですか?

千種 「本草七十二侯」の名前と関連するよう季節の草木や花、実などあらゆる素材を調べ、試行錯誤の末に完成しました。三重ならではの旬の素材で、この土地の季節や風土を感じていただきたいですね。例えば、春は海から始まると言われていて、三重はわかめ漁が盛んですが、この地の春にはわかめのお風呂を楽しんでいただくとか。
また、鳥羽に日本固有の原種があり、古くから不老長寿の木と考えられている、日本最古の柑橘類「ヤマトタチバナ」。三重が産地で知られているお茶の葉や前川次郎柿。鈴鹿市が産地として有名な芍薬*の花も、女性に喜ばれるのではと思っています。あと、美肌効果があると言われている米ぬかにも注目しています。伊勢神宮のお米の収穫時期に合わせるのもいいなと。生姜や大根の干した葉などもおもしろいですよね。伊勢たくあんが有名で、この辺りでは冬になるとよく大根を干しているんです。
そして柚子や温州みかんなど、三重といえばやはり柑橘は欠かせません。
実現できるかわかりませんが、「七十二候」に欠かせない「寒の水」をぜひ取り入れたいなと思っていて。「二十四節気」とも関連しますが、一番寒い時期だけ寒の水のお風呂って入ってみたくて。とても特別なお水なんです。三重は植物がとても豊かで、たくさんアイディアが湧いてきました。

西村 こういった土地ならではの素材を使った薬草湯は、なかなかほかにはないと思います。千種先生にご提案いただいた素材を、私の方で成分に毒性がないか、手に入れやすい素材かどうかを調べて確認しています


―併設されている薬草園や本草研究所では、どんな取り組みがされるのでしょうか? 

瀬木 いくつかの生薬はここの薬草園で育てながら、三重大学のラボとも連携し、温浴施設に提供する薬草などを研究します。ここでは実際にお客さまの生の声を聞くことができるので、それをうまく反映して、さらに進化させたいと思っています。今はこの組み合わせだけど、実際にはじめてみたらこの組み合わせがいいとか聞いて、これを基本にまたさらに進化していく必要があると思います。研究所はそういう拠点にしていきたいですね。

西村 各地でも自然を取り入れた体の調律が行われていて、山形では、春には雪の中に生えている山菜を食べるのですが、山菜は抗酸化力が高く、体の中から脂を抜く作用があると私は考えています。春に山菜を食べるとは、冬に溜まってしまった毒素を脂とともに体の外に出し、体を整える(解毒する)ということなんです。春になると体が欲するままに山菜を食べて、自然と体を整え直す、そんなサイクルが自然と昔から続けられてきました。また、海女さんは海に潜る体力をつけるためにたくさん食べます。食事では海藻もしっかりと食べます。よく食べる海藻のひとつにアオサがあるのですが、アオサには体内の脂を排出させる作用があることも私たちは研究で明らかにしました。
昔から伝統的に食べられている食材、それにどのような意味があるのか。昔の人たちはそれを自分の体の声を聞いて選んでいたのではないか?それが私たちの研究課題。それをVISONの本草湯にどう落とし込んでいけるか、これから研究していきたいと思っています。



本来の自分の声を聞く場所、 心と体を整えて、軸を戻す場所に

―お客さまにこの施設で過ごすことで、どんなことを感じてもらいたいですか? 

西村 人間は、体が欲する物を理解して、食べ物からでもいいしお風呂からでもいいし、必要なものを補って、本来の軸に戻すことが大切。その整う感覚を感じてもらえたらと思っています。

瀬木 都会にいると、季節や体調の変化を感じにくくなってしまうのですが、本来さまざまな変化を感じることができるのが健康な状態。それを感じることができるような、サービスや食、温泉を提供したい。鈍ってしまった感覚をここでリセットしてもらえたらいいですね。

千種 「本草七十二候」では、風が吹いたり、雨が降ったり、晴れたり、植物に実がなったりといったような、季節の移ろいを表現しているので、見ていただくだけでも多気の自然や暮らしを感じていただけると思います。季節を変えて何度も足を運んでいただけると嬉しいです。

―5年後、10年後、どんな場所になっていてほしいと思いますか? 

西村 コロナを経て、みんなが本来の自分の生き方を考えるタイミングだと思います。本来は自分たちにとって一番心地いい場所で、自分の力を発揮して充実した日々を過ごすというのが人生において大切なこと。それを考えるきっかけになり、本来の自分の体の声を聞く場になるといいと思っています。そして世界中からたくさんの人が訪れて、何かを感じ取って帰ってもらえたらいいですね。

瀬木 まさに、ここを本草の“総本山”にしたいと思っています。同じような考えの方や施設が日本だけでなく世界中に広まっていくといいなと。それが結果的に地域への貢献にもなるし、SDGsにもなる。さまざまな場所や人に貢献できるような総本山になればと思います。

千種 VISONは多気の自然に溶け込んでいて、これから木々が育つともっと馴染んで素敵な場所になると思います。ここに来ていただくことで、まだまだこんなに豊かな場所があるんだ、こんなに季節の変化を感じられる場所があるんだ。そして、日本はやっぱり豊かだなと感じていただきたいですね。本草エリアから見える山々がとても素晴らしい。春は「山笑う」、夏は「山滴る」、秋は「山装う」、冬は「山眠る」と季語がありますが、そんな季節ごとの山の姿も楽しんでもらいたいですね。三重は海のイメージがある方も多いですが、山に降った雨が川を通って海に流れていく。海のもとである山を見ていただくというのも大切なことだなと感じています。

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